【HDS-R】長谷川式評価をもっと詳しく見てみる!項目ごとに障害が異なります!

底辺理学療法士、トリぞーです。

 

介護老人保健施設へ異動してきて2週間。

職場は今まで全く違う、認知症専門棟です。

 

認知症についてはざっくり勉強したのですが、やはり職場に慣れず。

そんな時に上から「ハセガワとってー」と言われました。

誰でも1度は経験がある長谷川式簡易知能評価スケールです。

 

2年ぶりくらいにHDS-Rを行い、結果は15点。

認知症専門棟にしてはいい方かなーとか思っていたのですが、ある疑問が浮かびました。

点数だけで認知症とか判断するけど、もっと詳しく見るべきじゃないかと

 

なので今回は改訂長谷川式知能評価スケールについて勉強します。

 

改訂長谷川式簡易知能評価スケール

 

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)は1974年に長谷川らによって作成された検査です。

体を動かすことなく検査が行えるので、運動障害のある人でも実施可能な評価法として臨床場面で広く使用されてきました

しかし、時代に合わなくなてきた質問項目もあり、項目と採点基準等の見直しが行われ、1991年には改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)となりました。

 

HDS-Rは記憶を中心とした、大まかな認知機能障害の有無の判定を目的としている、9項目で構成された検査法です

検査時間は5〜10分、最高得点は30点、カットオフ値は21点/20点です。

21点以上を正常とし、20点以下を認知症の疑いと判定します

 

 

項目内容

 

項目内容は以下となっています。

1. 年齢の確認

2. 日付の確認

3. 場所の確認

4. 単語再生(3単語)

5. 引き算

6. 逆唱

7. 短期記憶

8. 物品記銘

9. 語想起(野菜)

 

この9つの項目の点数を合計して認知症の疑いがあるのか、また認知症がどれくらい進行しているのかを評価します

今までは点数を見て、あー認知進んでるなーくらいしか感じなかったのですが、今の職場は認知症専門棟。

合計得点だけではなく、どの項目の点数が低く、どんな障害が考えられるかを評価出来たらいいなと思います。

 

見当識

 

見当識とは時間や場所、人物など周囲の状況を正しく認識する能力のことです

この見当識が障害されると「今はいつか」「ここはどこか」「この人は誰か」という状況を判断することが出来なくなります。

HDS-Rでいう1〜3の項目です

 

認知症では近時記憶(数分〜数ヶ月前の記憶)による時間の見当識から障害されます

次に現在自分がいる場所や自分の自宅がどこにあるかわからなくなる、場所の見当識障害の出現

周囲にいる人が誰かがわからなくなる、人物の見当識障害は認知症がかなり進行してから生じます

 

時間の見当識障害には新しいことが覚えられない前向性健忘による近時記憶障害

場所の見当識障害は近時記憶障害に加えて、視空間失認が関連しています。

人物の見当識障害では、どの人物がわからなくなるかによって異なります

 

認知症発生後に出会った人物を特定できない場合には、前向性健忘による記銘力障害の可能性。

自分の家族や友人など昔から知り合いが誰かが分からなくなった場合には、視覚失認や聴覚失認によって知人の顔や声を認識できなくなった可能性があります

また、昔のことを思い出せない逆向性健忘による可能性が考えられます。

 

項目2が0点でも項目3が2点の場合、そこまで認知症は進行していないと言えますね。

しかし、アルツハイマー型認知症を例にすると、初期は記憶に関連する海馬が萎縮しますが、後期になると大脳全体が萎縮します。

すると上記の視覚失認や聴覚失認が発症し、人物の見当識障害が見られるのかもしれません。

 

 

聴覚性記憶

 

HDS-Rの項目4は3つの単語を覚えてもらう内容で、聴覚性記憶が関係します。

聴覚性記憶は左後部帯状回の損傷などで障害されます

また、聴覚というと側頭葉が関係しており、側頭連合野が高次の聴覚情報処理および記憶に関わっています。

 

アルツハイマー型認知症にlogopenic progressive aphasia(LPA)という原発性進行性失語を呈するという報告があります。

この症状は句や文の復唱障害が主に見られます

しかし、文法や構文は冒されないため、発語は基本的には流暢となります。

LPAは優位半球の上・中側頭葉後部から下頭頂葉小葉を中心とした萎縮、あるいは血流低下が見られます

 

アルツハイマー型認知症では記憶に関わる海馬と同様、初期から側頭葉にも萎縮が見られます。

しかし、頭頂葉の萎縮は中期に入ります。

前頭側頭葉型認知症の初期の場合、記憶障害というより人格変化や行動異常が特徴となるので、初期症状ではアルツハイマー型認知症と前頭側頭葉型認知症と区別することがきます

でも、経験上は重度の認知症でもHDS-Rの項目4の得点率は高い気がします。

 

 

注意

 

項目5・6注意についての内容となっています。

注意機能には以下があります。

対象を選ぶ(選択性)

対象への注意を持続させる(持続性)

対象を切り替える(転導性)

複数の対象へ注意を配分する(分配性)

 

注意障害が見られると以上に示した機能が障害され、注意を適切に向けられなくなります。

主な病巣は前頭葉の前頭連合野です

 

同じ前頭連合野の障害として遂行機能障害というものもあります。

これは物事を段取りよく進められなくなる障害

この遂行機能障害の根本に注意障害があるのでリハビリとしては注意障害から対応をすることになります

 

アルツハイマー型認知症の場合は前頭葉の萎縮は後期からです。

レビー小体型認知症も後頭葉の萎縮が特徴となります。

なので認知症が初期の場合、項目5・6の得点が低い場合、前頭側頭葉型認知症または、脳血管性の認知症の可能性が高いことになると思います

 

何かの文献で認知機能は計算から衰えるとの記載がありましたが、経験上では重度の認知症の方でも計算能力は割と残っている印象があります。

しかし、その場合は同じ問題でも紙面上の計算は可能で、暗算はできないのかもしれません。

 

注意障害への対応としては刺激をなくし、集中しやすい環境を整えたり、患者が興味を示す課題をじっくり時間をかけて行ってもらうことが効果的となります

 

 

即時記憶・エピソード記憶

 

項目7短期記憶の内容となっています。

詳しくは、記憶は保存時間と内容により、即時記憶近時記憶遠隔記憶の3つに分類されます。

即時記憶は数十秒程度、近時記憶は数時間〜数日、遠隔記憶は数週〜数十年とされています

 

また、記憶は内容によっても分類されます。

まず、記憶を大きく分けて陳述記憶非陳述記憶となります。

非陳述記憶とは手続き記憶とも呼ばれ、言葉で他人に伝達できない記憶であり、自転車に乗る方法やダンスといった運動技術や習慣にあたります。

いわば「体が覚えている」というようなものです。

 

陳述記憶はさらにエピソード記憶意味記憶に分けられます。

エピソード記憶は日々の生活における出来事の記憶

意味記憶は知識に相当し、例えばリンゴと言った時に「丸い、赤い、甘い」と連想される記憶です。

 

このことから、HDS-Rの項目7は即時記憶エピソード記憶が使われることになります

陳述記憶(エピソード記憶、意味記憶)は主に側頭葉と間脳が関与すると考えられています。

エピソード記憶の障害は健忘として観察されるため、内側側頭葉や間脳大脳辺縁系の関与が指摘されています。

 

即時記憶、エピソード記憶はアルツハイマー型認知症では初期から障害されるため、HDS-Rでの点数を得ることが出来ないことが多いと思います。

 

 

視覚性記憶

 

項目8視覚性記憶に関する内容となっています。

視覚性記憶は右楔前部・右帯状回の血流が関連していると言われています

 

視覚性記憶も初期のアルツハイマー型認知症に見られますが、視覚に関連する後頭葉の血流低下が見られるレビー小体型認知症にも見られるかもしれません。

 

レビー小体型認知症の場合は認知機能障害に変動が見られ、幻視も特徴となります

 

 

語の流暢性

 

最後の項目9語の流暢性に関する内容となっており、これは前頭葉に関する項目です

アルツハイマー型認知症は想起語数(HDS-Rでは野菜)が低下するとの報告があります

言語情報処理における抑制機能が低下し、それが語流暢性課題の成績に影響を及ぼします。

 

私が主に参考にしている書籍にはアルツハイマー型認知症の前頭葉の萎縮は後期と記載されていますが、初期から症状が出るとの論文もありました。

 

経験上では軽度の認知症の場合、野菜の名前はたくさん出ますが、重度になってくると5個以下が多い印象。

前頭側頭型認知症の場合は言語に関する障害は中期からとの記載があります

アルツハイマー型認知症の語流暢性の大きな障害は後期かなと思われます。

 

 

まとめ

・項目1〜3

 →見当識の障害。記憶障害の進行具合がわかる。

 

・項目4

 →聴覚性記憶障害。側頭葉の関連あり。
  アルツハイマーの場合は頭頂葉の中期から後期にかけての進行具合。

 

・項目5・6

 →注意障害。前頭葉に関連あり。
  

・項目7

 →即時記憶・エピソード記憶の障害。

 

・項目8

 →視覚性記憶障害。後頭葉に関連あり。

 

 ・項目9

  →語流暢性障害。前頭葉に関連。    

 

 

おわりに

 

今回は改訂長谷川式簡易知能評価スケールをできるだけ詳しく勉強してみました。

勉強してみて、HDS-Rは前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉や初期の認知症分類を簡易的に判別できるかなって印象があります

 

臨床ではHDS-Rを最初に評価し、特に脳のどの部分の障害が強いかをみて、障害に応じたより詳しい評価を使い、細かく認知症を見ていきたいと思います。

そして、ただ計算をしてもらうだけとか、文を読むだけとかではなく、評価に基づいた認知症のリハビリを行えたらと思います。

 

 

参考書籍・文献

・長谷川式知能評価スケール(HDS-R)の結果に影響する神経心理学的要因の検討

・知っておきたいリハビリ評価21 改訂長谷川式簡易知能評価スケール

・実地医からの認知症

・海馬、大脳辺縁系

・アルツハイマー病における言語性記憶または視覚性記憶と局所脳血流の関連

・アルツハイマー病の言語症状(失語)

・聴覚性記憶の神経機構:サルにおける後部帯状回を介した聴覚連合野-海馬体間を結ぶ神経投射の検討