【変形性股関節症】底辺理学療法士が勉強した変形性股関節症のリハビリを紹介します。

理学療法士が臨床で関わることが多い変形性股関節症を勉強したので紹介します。

はじめに

変形性股関節症とは一次性と二次性に分類され、そのほとんどが先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全に起因する二次性股関節症だと言われています。一次性股関節症の頻度は1〜4%程度との報告が多いですが、そのような症例にも軽微な臼蓋形成不全など何らかの形態異常が認められています。

二次性関節症には他にもペルテス病、大腿骨頭すべり症、化膿性股関節炎、RA、特発性大腿骨頭壊死などがあります。

 

病期分類

変形性股関節症の病期分類は一般的に両股関節X線正面像で確定されます。

前期初期進行期末期
関節裂隙の
狭小化
ほとんどなし軽度、中等度高度、部分的消失広範な消失
骨構造の
変化
骨梁配列の変化のみ臼蓋の骨硬化臼蓋や骨頭の骨のう包広範な骨硬化像、巨大な骨のう包
臼蓋および
骨頭の変化
先天性・後天性の変化あり軽度の骨棘形成骨棘形成、臼蓋の増殖性変化著名な骨棘形成、臼底の二重像、臼蓋の破壊

日本整形外科学会変形性股関節症のX線像評価基準

疼痛の程度と変形は必ずしも一致するとは言えません。

 

X線画像(立位)

関節裂隙の狭小化や骨盤の後傾は臥位よりも立位で増大します。X線正面像は主に側方の大腿骨頭被覆量を観察するものであり、前後の大腿骨頭被覆量の観察には立位骨盤斜位像(false profile像)が有用です。

・VAC角:大腿骨頭中心を通る垂線V、大腿骨頭中心C、臼蓋前縁の3点を結ぶ線Aのなす角。
→正常値 25°以上

・AAHI  :大腿骨頭後縁から臼蓋前縁までの距離Aを大腿骨頭Bで除したもの。
→正常値 82%以上

 

骨盤傾斜と大腿骨頭被覆量の関係

正常の臼蓋は前方と側方に30°〜40°傾いています。大腿骨頸部には頸体角(125°)、前捻角(15°)があり、立位姿勢では股関節は前方部分の被覆が不十分となります。

立位から骨盤を前傾すると股関節は相対的に屈曲内旋し、大腿骨頭の被覆量は増大します。しかし、骨盤後傾により股関節は相対的に伸展外旋するため、大腿骨頭の被覆量は減少し股関節の安定性は低下します。

 

腸腰筋の過剰収縮

腸腰筋は走行上、大腿骨頭の前方を回り込み大腿骨後部にある小転子に停止するため、股関節前方より骨頭を支持しています。骨盤後傾により大腿骨頭の前方被覆量が減少すると、腸腰筋による前方支持の依存度は増大し、過剰収縮をきたし疼痛の原因となります。

 

理学療法評価

問診

一般的な基礎情報に加え主訴、仕事、住居、家屋の構造などの情報も重要です。患者の生活背景を知り、理学療法のゴール設定を行います。

 

下肢長

変形性股関節症では大腿骨頭の亜脱臼や変形、大腿骨頸部の短縮、頸体角の異常、股・膝関節の関節拘縮などの要因により下肢長差が生じる場合があります。TMD(転子果長)とSMD(棘果長)の計測を組み合わせて評価を行います。

例えば左右のSMDに差があり、左右のTMDに差が無ければ下肢長差の原因が大転子より上にある可能性が考えられます。

 

疼痛

変形性股関節症の初期症状はまず長時間の立位や運動後に起こる下肢のだるさや疲労感から始まります。病態の進行に伴い、歩行時などに明確な痛みが発生し、その箇所は股関節周囲の他に腰部や臀部、大腿付近などにも広がる場合もあります。

痛みの原因としては磨耗した関節軟骨粉により生じた関節包の炎症が挙げられます。痛みを感じる部位は自由神経終末が豊富に存在する関節包、骨膜、腱、靭帯があります。軟骨自体には自由神経終末が存在しないので、骨がぶつかって痛いという考えには疑問がありますが、骨髄から軟骨下骨付近まで神経線維が伸びているので、これが刺激されることにより痛みが生じるという考えもあります。

評価方法にはNRS(Numerical Rating Scale)、VAS(Visual Analogue Scale)、フェイス・スケールなどがあります。

 

Patrickテスト

変形性股関節症では股関節の前面に疼痛部位が集中するのが特徴です。Patrikテストにより股関節を屈曲、外転、外旋させ疼痛の有無を評価します。疼痛がある場合は腸腰筋の収縮時痛や伸張痛の評価も行います。

 

Elyテスト

股関節前面部に疼痛があり、腸腰筋の収縮時・伸張時痛がない場合、Elyテストを行います。患者を側臥位や腹臥位にし股関節を痛みがない範囲で伸展・保持し、次にゆっくりと膝関節を屈曲させます。下前腸骨棘付近で痛みがあると大腿直筋に問題がある可能性があります。

 

恥骨筋、長内転筋、薄筋

股関節内側の恥骨付近の疼痛も変形性股関節症では特徴の一つです。股関節を軽度屈曲し恥骨部を触診します。その後、ゆっくりと股関節を外転すると恥骨筋、長内転筋、薄筋の筋スパズムが原因の伸張痛を訴える場合があります

 

梨状筋

梨状筋は腸骨大腿靭帯や坐骨大腿靭帯と共に股関節後面の支持に関与しており、腸腰筋と同様に関節を安定させるために過剰収縮し疼痛が発生する場合があります。また、病態の進行に伴い股関節の外旋拘縮が著名化するケースが多いですが、その原因として梨状筋の痛みが挙げられます。

 

関節可動域

股関節の関節内圧は屈曲角度と高い相関があり、屈曲0°から20°〜40°で関節内圧が減少します。そのため普段がら疼痛回避のため、股関節屈曲位の姿勢をとることが多いです。さらに臼蓋と大腿骨頭の関節適合性は股関節の軽度屈曲、外旋位で得られるためこの肢位をとることが多く、拘縮が発生しやすくなります。

 

跛行

変形性股関節症では疼痛、筋力、下肢長差といった機能レベルの低下から様々なタイプの跛行がみられます。

変形性股関節症でよくみられる跛行

原因種類特徴
痛み疼痛性跛行逃避跛行疼痛が増すと、荷重時の痛みを回避するため患肢の立脚時間を短くして歩く。
滞留跛行逆に股関節にかかる急激な衝撃力を避けるため立脚時間を延長して歩く。
筋力軟性墜落跛行Trendelenburg跛行外転筋力の低下で患側の立脚時に健側の骨盤が下がる。
Duchenne跛行逆に患側立脚時に骨盤が下がるのを防ぐため体幹を患側に傾ける。
下肢長差硬性墜落跛行患側下肢の短縮のため荷重側へ骨盤が傾く。

 

 

立位姿勢(アライメント)

変形性股関節症では骨盤が前傾し腰椎の前弯角が増大している骨盤前傾タイプと骨盤が後傾し腰椎の前弯角が減少している骨盤後傾タイプに分けることができます。
評価方法としてはASISとPSISを触診し、この間が2〜3横指であれば正常です。3横指以上であれば骨盤前傾タイプ、2横指以下であれば骨盤後傾タイプといえます。

臼蓋形成不全などで臼蓋被覆に問題がある二次性の変形性股関節症の場合、骨盤を前傾させ大腿骨頭の被覆率を高める骨盤前傾タイプになる可能性が高いです。一次性の場合は加齢に伴う胸椎後弯の増強、腰椎前弯の減少により骨盤後傾タイプになる可能性が高いです。

骨盤が25°後傾すると大腿骨頭の被覆率は21%減少するとの報告や、正常の骨盤傾斜の場合中殿筋と大殿筋の筋出力バランスは4:3なのに対して、前傾が強まると筋出力が3:4と逆転するとの報告があります。

 

ADL

ADLの評価にはJOAスコア(日本整形外科学会股関節機能判定基準)があります。
JOAスコアは疼痛、関節可動域、歩行能力、ADLの4項からなり100点満点で評価するものです。疼痛に対する点数配分が高いため、疼痛の程度が股関節機能に大きな影響があることが分かります。

 

治療方法

治療方法には保存的治療、観血的治療法があります。

保存的治療

変形性股関節症に対する保存療法では疼痛に対し、消炎鎮痛剤の外用・内服や局所麻酔剤の関節内注入が行われます。また、運動療法では疼痛の軽減、関節可動域・筋力の維持改善が進行の遅延・停滞を目的に行われます。しかしこれらは臼蓋形成不全や関節の変形に対する治療ではありません。

 

消炎鎮痛剤の種類:副作用の少ない非スレロイド性の消炎鎮痛剤(NSAIDs)が主に使用されます。

→ロキソニン、アスピリン、セレコックス、ボルタレン、ナイキサン

 

観血的治療法

変形性股関節症の整形外科的治療は病期や年齢、症例の社会的背景を考慮し施行されます。手術の種類として、骨盤側では寛骨臼回転骨切り術(RAO)、Chiari骨盤骨切り術、大腿骨側では外反・内反骨切り術、外反伸展骨切り術(Bombelli術)、などがあります。
そして、末期の股関節症には、人工股関節全置換術(THA)が用いられます。

 

リハビリ

変形性股関節症に対するリハビリとして、ここでは骨盤後傾タイプのリハビリを紹介します。

骨盤後傾タイプ

X線立位正面像で股関節の関節裂隙の狭小化、臼蓋の骨硬化を認めたが、臼蓋形成不全の所見が認められない場合、腰椎前弯減少・骨盤後傾により大腿骨頭被覆率低下が原因とした変形性股関節症の可能性があります。被覆率が低下すると股関節を安定させようと腸腰筋などの過剰収縮がみられ、疼痛の原因にもなります。
その場合のリハビリとして腸腰筋のリラクゼーション、骨頭被覆運動を行います。

・腸腰筋のリラクセーション

患者の同側肩外側方向に膝を誘導するように大腿骨頸部軸を中心とした股関節屈曲運動を自動介助で行います。また、疼痛の生じない最終域で軽い等尺性収縮を行います。

 

・骨頭被覆運動

腰椎の生理的前弯、骨盤の前傾位を獲得による大腿骨頭被覆量の増大を図ります。端座位から開始し、徐々に立位姿勢に近づけ、その姿勢での腸腰筋・体幹固定筋(腹筋群、脊柱起立筋)の収縮を行います。

 

おわりに

変形性股関節症について記しましたが、リハビリでは股関節に対してのアプローチでは不十分と言えます。股関節だけに注目するのではなく、どこに原因があるのかをしっかりと評価し、身体全体を捉えた理学療法が必要です。