底辺理学療法士のトリぞーです。
長期実習で知り合った同期と飲んでいるとき、こんな会話をしたことがあります。
「リハビリって結局、筋肉収縮させるか緩めるだけやろ?」
無知だったんですねー。
今も無知ですが…。
もちろんリハビリってそんな単純ではありません。
そこで、今回は深部感覚について勉強したいと思います。
深部感覚
深部感覚とは、骨・筋・腱・関節・靭帯に対する接触刺激、またはこれらの運動から起こる感覚のことです。
手足の位置(位置覚)や運動の方向(運動覚)がわかる運動感覚、音叉を骨に近い皮膚上に当てると感じる振動覚、骨膜・筋・腱などに強い圧迫や刺激が加わって生じる痛みの感覚(深部痛覚)に分類されます。
深部感覚と言っていますが、固有感覚と言うときもあります。
深部感覚(固有感覚)の受容器は外部からの刺激だけではなく、身体の中から刺激を受けることから固有感覚とも呼ばれています。
深部感覚
・位置覚
・運動覚
・振動覚
・深部痛覚
深部感覚の受容器
深部感覚の受容器は筋紡錘・腱器官・関節受容器・深部組織に存在する侵害受容器です。
関節受容器と深部組織については参考になる資料がありませんでした。
筋紡錘
筋紡錘は筋内にある長さ6〜8mmの受容器です。
働きとしては筋の長さを検出する機能を持っています。
筋紡錘の真ん中は収縮せず受容器を含み、両端には収縮性筋繊維の錘内筋繊維があります。
錘内筋繊維で錘外筋繊維に結合します。
腱紡錘
腱紡錘は腱受容器・ゴルジ終末とも呼ばれ、筋紡錘と同じく筋の中にあります。
腱紡錘は長さが1mmくらいで筋線維の端近くの腱にあります。
腱紡錘は筋紡錘より閾値が高く、筋が伸びると伸張反射がおきます。
しかし極端に伸ばされると腱紡錘が興奮し、筋活動は抑制されます。
伝道路
深部感覚の伝道路は意識的なものとしては後索路(脊髄延髄路)、無意識的なものとしては前・後脊髄小脳路があります。
後索路(脊髄延髄路)
自覚がある深部感覚は抹消から後索の上端にある薄束核と楔状束核を通ります。
これを後索路(脊髄延髄路)と言います。
ここからニューロンを変え、延髄で内弓状線維となって正中線を越えて(毛帯交叉)、脳幹を上行して視床に終わります。
前・後脊髄小脳路
自覚がない深部感覚は抹消から脊髄を経て、小脳に伝えられます。
前脊髄小脳路は脊髄神経節から脊髄全角の辺縁部に交代し、ここからの線維が白交連で交叉して反対側の側索外側部を上行して上小脳脚を経て小脳に至ります。
後脊髄小脳路は脊髄神経節から後角基部にある胸髄核に伝えられ、同側性に側索後部を上行して下小脳脚を経て小脳に至ります。
理学療法評価
理学療法評価では、静かな環境でリラックスした肢位で検査を実施します。
深部感覚は関節がどの位置にあるか(位置覚)、どういう方向に動いたか(運動覚)を伝えます。
検査では患者に閉眼させ、健側の上下肢を動かしてもらい、反対側の上下肢でをしマネてもらいます。
しかし、深部感覚が正常でも完ペキにマネできる訳ではありません。
正常でも5度くらいの誤差はあります。
膝関節では、10度以上の角度の誤差がないと異常といえないのが実際です。
あくまで個人的な臨床での評価を紹介します。
片麻痺患者の歩行時の立脚期を例とします。
患者は立脚期で麻痺側の膝関節が過伸展してしまう。
この記事では深部感覚の勉強をしていますが、実際の臨床で過伸展が見られると大腿四頭筋の筋力低下をまず疑います。
MMTで膝伸展筋力をみたり、膝蓋骨の動きをみたり。
筋力に問題が見られない場合に、1つの選択肢として深部感覚をみます。
患者に麻痺側を一歩前に出してもらい体重をかける。
その際に膝は曲がってますか?それとも伸びてますか?と聞きます。
深部感覚障害があるなら曲がっているか、伸びているか分からない可能性があります。
深部感覚障害を考える前に、まずは基本的な関節可動域だったり筋力をみて、その後に深部感覚の影響を疑う方がいいかなと思います。
理学療法
深部感覚障害に対する理学療法は正常な動作を通して感覚をフィードバックすることです。
片麻痺患者を例とします。
片麻痺患者は歩行の際、麻痺側立脚期に膝関節が過伸展する場合があります。
深部感覚障害では、患者は自分の膝関節がどうなっているか直接見ないと分からないことがあります。
まず患者に過伸展している膝を見てもらいましょう。
そして、視覚を用いて過伸展にならないように荷重応答期なら°、立脚中期なら5°を保てるように繰り返し練習して、徐々に視覚に頼らないような練習につなげます。
深部感覚障害に対するアプローチはまず視覚を利用して、徐々に視覚の代償がなくても正常な位置や動作になるようにフィードバックさせます。
歩行は無意識の動作なので、無意識下で膝のコントロールができることを目標とします。
2つめの例として麻痺側上肢に深部感覚障害があるとします。
上肢に深部感覚障害がある場合、まずは体幹・上肢近位部の安定性を確保します。
体幹や近位部の安定性を確保してから、上肢の空間位における保持や動作を促します。
いきなり自動運動をしてもらうのではなく、自動介助により上肢の位置や運動の方向性を誘導し、自動運動につなげます。
最初は視覚によるフィードバックを利用するといいです。
卓上動作を促す場合は過剰な代償には注意が必要です。
過剰な代償が見られると正常な感覚入力が妨げられるため、決して慌てず患者の示す反応を見ながら動作を獲得していきます。
おわりに
今回は深部感覚障害やその理学療法について勉強しました。
もちろん国家試験では必須ですし、どなんもんかは知っていたつもりですが、臨床では意識したことがなかったです。
さすが底辺の理学療法士、恥ずかしいばかり。
臨床でも意識してきたいと思います。
参考資料
・深部感覚障害を有する患者への理学療法評価と理学療法の考え方
・標準理学療法学・作業療法学 解剖学
・基礎運動学
・若年正常膝の関節位置覚