【人工膝関節置換術】TKA術後の10m歩行時間と下肢筋力の論文を紹介します。

 自治医科大学リハビリテーション科が中心として発表している人工膝関節置換術後の10m歩行時間と下肢筋力の論文を紹介します。

はじめに

 この論文は人工膝関節置換術(以下、TKA)ぞの歩行速度と下肢挙上筋力(SLR)との関係を明らかにすることを目的にしたものです。
 膝伸展筋力はハンドヘルドダイナモメーター(以下、HHD)を使用し、その有用性が脳卒中や股関節骨折などで報告されていますが、これらの報告の多くは端座位、つまり膝屈曲位での筋力測定です。しかし、膝を伸展して行うSLRはTKA術後の筋力評価に有用であると報告されています*1。

 

対象と方法

 対象は片側TKAを行った女性81例、その内わけは変形性膝関節(以下、OA)例が42例、関節リウマチ(以下、RA)例が39例で研究が行われています。また対象者の平均年齢は70歳(43〜88歳)、平均身長は148.7cm(130〜161cm)、体重は56.4kg(39〜87kg)です。
 SLR筋力の測定方法は、仰臥位で被験者にSLRを行わせて足関節より10cm近位にHHDを当てています。その際、反対の股関節と膝関節は屈曲位とし、測定を行う膝のextension lag はある程度無視されています。よって踵が床から離れればSLR可能と判断して測定しています。測定は3回行われ、平均値をSLR筋力と定義しています。歩行速度は10m歩行を実施し、測定時はいずれもT字杖が使用されています。
 検討項目はSLR筋力と10m歩行時間であり、計測は杖歩行が安定したと判断した術後平均22日に行われました。統計にはSpearmanの順位相関係数が用いられ、危険率は5%として有意差検定が行われています。

 

結果

 健側でのSLR筋力はOA例とRA例との間に有意差はありません。患側でのSLR筋力はややOA例で大きな値が出ていますが、ことらも有意差はありません。OA・RA例のどちらも健側と比較し、患側のSLR筋力は低値です。10m歩行時間でもOA例とRA例との間に有意差はありません。

 SLR筋力と10m歩行時間との関係ですが、SLR筋力が高いほど10m歩行時間が短いことが明らかにされています。これはOA・RA例も同様です。また、年齢とSLR筋力、年齢と10m歩行時間との間には関係性はみられません。

 

考察

 SLR筋力は歩行機能と密接に関係していることが報告されています*2。SLR筋力は膝伸展位の筋力を測定するので、膝屈曲位での測定よりも歩行能力に高く関与している可能性が考えられます。また、膝屈曲位での筋力測定と異なり、歩行に重要な股関節屈曲力測定結果に関与してきます。加えて、TKA術後患者でのSLR筋力に身長・体重は関与しないと報告されておりSLR筋力の評価にあたってはこれらの要素を考慮する必要性が低いことが明らかにされています*3。

 この論文でSLR筋力と10m歩行時間には高い関係性があり、TKA術後であってもSLR筋力は歩行能力と密接に関与しているが判明しています。これによりSLR筋力測定は従来の端座位での筋力評価よりも歩行能力を評価・推定する上では、より優れた方法と判断しています。

 

臨床実習での活用

 臨床実習ではリハビリの目標を決めます。急性期の具体的な目標としてTKA術後では術側の膝関節屈曲・伸展角度、健側と同様の筋力の回復やextension lagの消失、10m歩行やTUGの時間などがあります。この各々の目標をクリアすることでさらにADLの自立を目指します。
 そんな時、10m歩行の時間が遅い場合や筋力を評価する際、学校で習うMMTに加えSLR筋力を測定しアセスメントにこの論文を載せることができます。

 

引用文献

*1 川合 直美他:片側人工膝関節全置換術術後の下肢挙上筋力評価
*2 二木 立  :脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測 
*3 高田 尚  :TKA術後下肢筋力定量化の簡便な方法ーHand-held Dynamometerを用いてー

 

おわりに

 TKAは臨床実習で担当する機会が多い、メジャーなものだと思います。そして歩行と筋力はTKAにとって重要ですので参考になる論文だと思います。臨床実習ではHHDを使う機会はないと思いますが、SLR筋力は足が上がると筋力には問題ないかなと思います。端座位・膝屈曲位で行うMMTみたいに5である必要はありません。と言いますか、実際普通の人でもSLRでMMT5みたいな抵抗に耐えられませんよね。目安として健側のSLR筋力と比較してみてください。