【通所リハビリテーション利用者における身体機能と認知機能が転倒におよぼす影響について】の論文を底辺理学療法士が紹介します。

 職場で通所リハビリ利用者かつ、独居の方のアプローチを調べなくてはいけなくなり、ネットで探していたら出てきた論文です。長崎県雲仙市にある「介護老人保健施設 ガイアの里」というところの論文です。

 

はじめに

 高齢者における転倒は、身体機能の低下や抑うつなどといった心理面の障害に影響を及ぼすことが明らかになっており、それに伴い活動や社会参加の制限を引き起こすとされています。疫学調査によると、介護認定を受けた障害を有する高齢者では、地域在宅の健常な高齢者と比較し、転倒発生率が2倍近くあったことが報告されています1)。
 つまり、このような高齢者では転倒による障害発生や憎悪の危険性が高いため、特に介護認定を受けた高齢者に対する転倒予防の対策が重要となります。

 高齢者の転倒リスク要因を調査した研究では下肢筋力、歩行障害、バランス障害などといった身体機能の低下を報告しており、また身体機能だけではなく認知症も転倒発生の要因になると示されています。
 アルツハイマー型認知症高齢者104名を対象に、過去1年間の転倒発生の有無について調査した結果、44%の方が転倒しており、日常生活が自立した認知症のない地域在宅高齢者の転倒発生率は17%よりも高い結果が出ています。

 高齢者における転倒は身体機能や認知機能の低下が強く関連することが明らかになっておりいます。この論文は通所リハビリ利用者を対象とし、身体機能と認知機能が転倒におよぼす影響について検討することを目的としたものとなります。

 

対象と方法

対象

 対象は平成26年1月〜9月に通所リハビリの利用を開始した新規利用者のうち、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ、Ⅳ、M及び歩行困難者を除いた60名とされています。

 

方法

 評価項目は身体機能評価、認知機能評価、心理面、転倒リスク数とされています。
 身体機能評価は、TUG、5m歩行時間、5回椅子起立テスト(以下、CST-5)が行われています。身体機能評価はそれぞれ2回ずつ測定し、全てにおいて最短時間をデータとして採用しています。
 認知機能評価は、MMSE、数唱、TMT-Aが行われています。数唱は順唱と逆唱からなりそれぞれ短期記憶、ワーキングメモリの評価として用いられています。TMT-Aは注意・遂行機能の評価として用いられています。
 心理面の評価はGeriatric Depression Scale-15 item short form(以下、GDS-15)を用いて聴取し、転倒リスク数は鈴木らの転倒アセスメントをもちいて評価されています2)。

転倒の定義

 転倒の定義は、大高らの報告より「歩行や動作時に、意図せずつまずいたり、滑ったりして、床・地面もしくはそれより低い位置に手やお尻などの一部がついた全ての場面」とされています。

 

分析

 分析として、過去1年間の転倒の有無により、対象者を転倒群、非転倒群の2群に分類し、年齢、身体機能評価、認知機能評価、心理面、転倒リスク数の各指標についてMann-WhitneyのU検定を用いて比較されています。そして以上の分析後に従属変数に転倒の有無、独立変数に群間比較にて有意差を認めた指標のうち、多重共線性を考慮した指標を投入しロジスティック回帰分析が行われています。有意水準は5%未満です。

 

結果

 転倒群と非転倒群の群間比較の結果、転倒群では身体機能評価のTUG、認知機能評価のTMT-A、転倒リスク数が有意に高値を示していました。またTMT-Aのみが転倒の有無と独立して関連が認められています。

 

考察

 この論文では研究対象者の58%が転倒を経験しており、転倒予防の必要性が明らかにされています。その中でTUG、TMT-A、転倒リスク数が有意に高値を示しています。されに転倒既往の有無に影響をおよぼす因子についてTMT-Aのみが独立して関連が認められています。

 このことによりこの論文では転倒群は非転倒群と比較し、身体機能と認知機能の双方が低下しており、その中でも注意・遂行機能の低下が転倒発生に最も影響をおよぼしていたことを示唆しています。村田らは通所リハビリ利用者の転倒発生について影響をおよぼす要因についてTMT-Aにより評価された注意・遂行機能が独立して転倒を引き起こす要因と報告しています3)。

 この論文は注意・遂行機能へのアプローチが転倒予防につながる可能性を示唆しています。

 

おわりに

 私の担当の利用者の方に独居であり、転倒がめちゃくちゃ心配な方がいらっしゃいます。この論文を参考に、注意・遂行機能へのアプローチを行っていきたいと思います。

 

引用文献

1)鈴川芽久美、島田裕之:要介護者における転倒と骨折の発生状況 日本老年医学会雑      
                                    誌、2009
2)鈴木隆雄:「転倒予防」のための高齢者アセスメント表とその活用法
3)村田 伸:在宅高齢障害者の転倒に影響を及ぼす身体及び認知的要因