【小脳】運動失調の症状・予後・リハビリを勉強!病変部位で症状が異なります!

脳外科

底辺理学療法士、トリぞーです。

仕事で新規入所者の情報を相談員が説明してくれている最中に「下小脳脚?の梗塞だそうですよ」と言われました。

そこは軽くアーハンと流したのですが、いつも通り詳しく知りません。

 

なので今回は相談員に知ったかしないように、小脳や運動失調、リハビリについて勉強しました

 

小脳

 

小脳とは中脳・橋・延髄と繋がっている脳の1つであり、四肢・体幹の動きの調整や、平衡・眼球運動の調整に関わっています

その小脳も前葉・後葉・片葉小節葉、あるいは虫部・半球・片葉小節葉と区分されます。

 

小脳は脳幹(中脳・橋・延髄)と3つの大きな線維束で繋がっています。

これをそれぞれ、上小脳脚中小脳脚下小脳脚といいます。

上小脳脚は主に出力線維(遠心系)中・下小脳脚は主に入力線維(求心系)です

 

小脳の主な機能に協調運動というものがあります。

協調運動は中枢神経が様々なレベルで関与し、複雑な神経機能によって成立しています。

これにより時間的・空間的に運動を調整することができます

 

例えばバスケットのシュート。

シュートを打つ時、素早く肘を伸ばして(時間的)ボールを遠くに飛ばします。

そして飛ばしたボールをリングの中に入れます。(空間的)

 

小脳に障害が起きると協調運動障害が見られ、肘や手首などの筋肉や関節を正確に動かせなくなり、ボールは飛ぶものの、変な方向に飛んでしまいます

 

また、ヒトの運動の学習にも小脳の神経回路が関与しています。

スキーや泳ぎ、自転車の乗り方などの体で覚える記憶(手続き記憶)は小脳に蓄えられる考えられています。

 

 

半球

半球は小脳の両端の部分をいいます。

半球は大脳小脳とも呼ばれ、ここが障害されると四肢の動き調節や言語に支障がでいます

いわゆる、協調運動障害、構音障害などです。

特に小脳半球上部の病変で構音障害が見られます。

 

その他には、測定異常、測定過多、運動の分解、反復拮抗運動不能、筋緊張低下、リバウンド現象、眼振、時間測定異常などが見られます。

ヒトはこの半球が著しく発達しています

 

 

虫部

虫部は小脳の中心部分をいいます。

虫部は脊髄小脳とも呼ばれ、ここが障害されると立位・座位での動揺や歩行障害が見られます

 

さらに詳しく上部虫部と下部虫部とに分けることができます。

上部虫部の障害では歩行は失調性となり、上肢をを広げてバランスを取ることも見られます。

また歩行のリズムも崩れ、一直線上の継足歩行は困難となります。

 

下部虫部の障害では平衡障害が顕著に出現し、立位を取るだけでも前後上下にガクガクと動揺し、酷くなると立位保持だけではなく、座位保持も困難になります

上部虫部の障害より、より大きく上肢を広げてバランスを取る傾向にあります

歩行では強い失調性で酩酊様の歩容となり、言語は断綴性言語(言葉が2〜3音ずつきれぎれになる)が見られます。

 

 

片葉小節葉

片葉小節葉とは小脳の腹側の部分をいいます。

片葉小節葉は前庭小脳とも呼ばれ、ここが障害されると平衡障害や目まい、眼振などの症状が見られます

さらに、前庭眼反射異常、滑動性眼球運動の異常、衝動性眼球運動の異常、眼球測定異常などが見られます。

 

 

運動失調

 

運動失調とは協調運動障害の1つです。

運動麻痺がないのに、筋が協調的に働かず円滑に姿勢保持や運動・動作が遂行できない状態

 

具体的にはコップを取ろうと手を伸ばしても違う方向に手を動かしてしまう。

立っているとフラフラして姿勢を保持できない。

また、主動筋と拮抗筋がうまく働かず、スムーズな運動ができないなどがあります。

 

運動失調は4つの分類に分けることが出来ます。

 

 

1. 小脳性運動失調

小脳性運動失調は小脳の障害により起こる失調です。

上記にある、半球・虫部・片葉小節葉などの部位により様々な症状が出現します

主な疾患は小脳出血や梗塞、脊髄小脳変性症などがあります。

 

2. 脊髄性運動失調

脊髄性運動失調は脊髄後索−内側毛帯の障害による深部感覚障害によって生じます

主な疾患は以下です。

脊髄腫瘍

変形性頸椎症

脊髄空洞症

多発性硬化症

抹消神経疾患

 

症状の特徴は静止時や運動時ともに動揺が起こり、特に下肢に運動失調が著名に出現されやすいです

また、バランスを視覚により補うため、閉眼時に動揺が明らかに強くなり、倒れる方向がランダムであることも特徴です

歩行時には深部感覚障害のため、どれくらい足を挙げれば良いか分からず、必要以上に高く挙げるなどの歩容も見られます。

 

上肢に深部感覚障害が出現すると、一定の筋力が保持出来ずに手に持っているものを落としたりします。

また、手指伸展位のまま上肢回内位での前方挙上をすると、開眼時には姿勢を保持することが出来ても、閉眼すると手指がゆっくりバラバラ下に動くきます。

これをアテトーゼ様不随意運動といいます。

 

指−鼻試験においては閉眼すると目標から様々な方向にランダムにずれるため、小脳失調の様な測定過大とは異なります

書字では字の大きさ・間隔・場所などがバラバラであることが多いです。

 

 

3. 前庭性(迷路性)運動失調

頭の傾きや回転などの運動に関与する平衡感覚に重要な迷路の前庭器官に障害が起こることで生じる運動失調です。

前庭器官の抹消受容器である卵形嚢、球形嚢、三半規管の求心路は直接および一部は前庭神経核を介して小脳の片葉、傍片葉、小節葉に入力します。

また、前庭神経核を介し前庭脊髄路を経て、脊髄前核運動ニューロンへの入力もあります。

これらは体の平衡を保つ上で重要になるものです

 

これによる運動失調の特徴は体位変換時に起こる反射的運動の障害となります。

四肢単独による随意運動障害は見られません

 

運動失調の代償として視覚を使用する制御は脊髄性と同じですが、閉眼させた時に動揺が次第に大きくなります。

脊髄性は閉眼させると明らかな動揺が見られるので、この点では違いがあります。

 

動揺は一側性と両側性があります。

一側性だと立位や歩行時に併願させると患側に向かって倒れそうになります。

上肢においても両上肢前方挙上の際、閉眼させると患側に偏倚していきます。

 

両側性においては左右差がある場合を除いて、一側性の偏倚は見られません。

立位は動揺して不安定であり、歩行は歩隔が広くなります。

閉眼すると次第に動揺が大きくなり、転倒しそうになるが方向性はありません

 

主な疾患は以下になります。

前庭神経炎

メニエール病

感染性髄膜炎

多発性硬化症

脳幹梗塞、脳幹部腫瘍

小脳腫瘍

 

 

4. 大脳性運動失調

一般的には大脳半球の障害により起こる運動失調であり、主な障害部位は前頭葉と言われています。

しかし、小脳圧迫や前庭神経の伸展、前頭橋路障害なども言われており、はっきり証明されていません

 

運動失調の症状は小脳性に似ており、症状は障害側と反対側の身体に出現します

多発性脳梗塞などで両側前頭葉に障害が見られ、麻痺はなく筋力も十分に保たれているのに、立位はワイドベース、体幹には動揺が見られ後方へ転倒しやすい症例があります。

 

また頭頂葉病変で2つのタイプの症状が生じるという報告があります。

1つは感覚性運動失調。

いわゆる位置の感覚が損なわれたことで起こる運動失調です。

 

もう1つはpseudocerebellar ataxiaと呼ばれるタイプです。

特徴は運動麻痺や他覚的な感覚障害を認めないことから、小脳性運動失調と区別させる難しいタイプ。

 

また、一側の上下肢に不全麻痺があり、加えて麻痺の要素を除いても明らかな小脳性の運動失調が見られる運動失調不全麻痺などがあります。

 

 

運動失調の予後

 

小脳の可塑性・代償性は中枢神経機能の中でも大変優れていると言われます

しかし、小脳の病変部位によって運動失調の予後は異なります。

 

小脳半球の病変では予後は良好と言われています。

具体的には6ヶ月以内に運動失調は消失します。

 

しかし、歯状核を障害すると予後不良となります

歯状核に病変を有する症例では上小脳脚、小脳半球上部を含む上小脳動脈領域全域の梗塞があり、四肢の運動失調の予後は極めて不良であったとの報告がります

小脳半球病変の予後は良好とされているので、歯状核+上小脳脚の障害が予後不良の原因と考えられます。

歯状核+上小脳脚病変は小脳遠心系が全体的に障害されるために、永続的な症状を呈すると思われます。

歯状核と上小脳脚は上小脳動脈の領域なので、この血管が詰まると予後不良となるわけです

 

歯状核+上小脳脚(遠心系)では発生から一定期間を経た後に病変側上肢に不随運動(企図振戦、律動性骨格筋ミオクローヌス)が出現しています。

 

 

中小脳脚病変での運動失調は部分的には予後良好であり、全体的な病変では予後不良となります。

全体的な病変では前下小脳動脈起始部の閉塞によるものです。

全体的な病変は小脳の主要な入力系である橋小脳路の全体が障害されることにより、代償機能が働かず病変側上下肢の運動失調は遷延すると思われます。

 

 

下小脳脚病変における運動失調は延髄外側症候群(Wallenberg症候群)の部分症状として見られます。

予後は良好とされています

具体的には運動失調の回復は平均10週間であったとの報告や88%は6ヶ月以内に消失、12%は発症から12ヶ月では失調が観察されるが、その程度は軽度であり以後も改善が認められています。

同じ求心系の中小脳脚(橋小脳路)と比べて代償される可能性が推測されています。

 

 

 

評価と検査

 

運動失調の評価は以下があります。

ICARS

 脊髄小脳変性症に対して用いられることが多い。

 

UMSARS

 多系統萎縮症に対して用いられることが多い。

 

SARA

 小脳性運動失調に特化した8項目からなる

 ICARSやBarthel indexとの相関が高い。

 

運動失調においては動揺が主な問題の1つです。

どの部分どの様にどんな時に不安定になるのかを評価します。

 

また、介助が必要な場合は、介助することで安定する介助箇所を見つけます

その介助箇所にアプローチすることで介助量を軽減できればよしということです。

 

その際は具体的にどの様な介助をどの箇所に行ったかを記録し、再評価できれば明確な評価となります。

 

 

リハビリ

 

運動失調に対するリハビリは従来から継承されている方法に重錘負荷弾力包帯による圧迫フレンケル体操、歩行訓練、立ち上がりや立位時の荷重負荷練習、視覚誘導によるバランス練習などがあります。

しかし、姿勢・動作の獲得を目標にするあまり、過剰なほどの代償や疲労させるほどの過剰な練習量は良いアプローチとは言えません。

 

 

フィードバックからフィードフォワードへ

動作を繰り返すことで動きを理解しつつ、円滑化させることは日常生活活動を円滑に実施することにつながります

 

エアロバイクや早い歩行が動作を円滑にすることも多いそうです

円滑な動作の利用(フィードバック)が次の動作を予測させること(フィードフォワード)につながる可能性があると考えられます。

また、慣れ親しんだ病前の動作は有効になることも多いとのこと。

 

例えば、私はパソコンが好きで休みはずっと座りっぱなしなので、座位保持訓練が慣れ親しんだ病前の動作(姿勢保持)になるのでしょうか。

いつも料理をしていた人は上肢で作業しながらの立位保持訓練になるのでしょうか。

底辺理学療法士なのでこの辺の発想がありません…

 

 

適切な環境設定

リハビリにおいて恐怖感を伴う治療環境は代償を強める可能性があります

そうすると適切なアプローチは難しくなります。

 

脊椎性や前庭性などによる失調の場合、視覚による代償が起きます。

動揺を安定させるためには視覚の利用は重要ですが、過剰な代償は凝視に繋がります

結果、眼球コントロールを低下させ、それに伴い平衡機能の低下、動作の円滑性の低下へとつながる場合があります。

鏡を常に用いるアプローチには注意が必要となります

 

バランスなどへのアプローチで上肢の代償を行わせない様に、上肢の支持なしで動作を行わせる場合も注意が必要です。

そのアプローチで下肢や体幹の適切な反応につながれば問題ありません。

しかし、場合によって不必要な過剰な代償につながる可能性もあります。

例えば、両方の挙上や腰椎伸展、股関節屈曲、半張膝などです。

 

その様な時は、軽い上肢の支持があった方が逆に過剰な代償を防ぐ可能性もあります

 

 

体性感覚入力

動揺の出現により、近位関節で固定を強めることがあります。

過剰な固定が継続すると円滑な動作には繋がりません

 

この場合は股関節など動きが固いところを軽く触れます。

そして、患者にリズミカルに動作をさせると固定を減弱させることができ、遠位部が円滑になることもあります。

このリズミカルな動作にも動揺が見られる場合は、自動介助運動で行います。

 

 

ステッピングトレーニング

動物モデルを用いた研究において、脊髄内の神経回路に学習・適応能力があることが言われています

脊髄神経回路の適応変化を起こすには脊髄への刺激適切なタイミングで繰り返し与える必要があるとのことです。

人間でも荷重情報の繰り返し入力が脊髄の歩行中枢を賦活し、トレーニングによってそれが増強すると言われています

 

文献上の適切なタイミングだったり、刺激を入れるだったりって非常にわかりづらい!

ここでの適切なタイミングとは恐らく、セラピストが患者の重心をずらし、重心が支持基底面から外れて足を一歩出し荷重をかける練習だと思います。

 

小脳は歩行中、脊髄や体性感覚系の受容器からの情報を脊髄小脳路を介して常時受け取っています。

しかし、普通のトレッドミル歩行や床上での歩行は小脳への刺激が少ないと言われています。

左右の速度や方向を変化できる分離型のトレッドミルでは刺激が多かったとの報告があります

 

これらのことから、脊髄性の失調における動揺には円滑なトレーニングを繰り返し行い小脳性の失調における動揺には繰り返しの中でも外乱を伴うトレーニングが効果的だと言えます

トレッドミル以外にもエアロバイクやリズミカルな歩行練習などに加え、状況に応じたセラピストの課題提供が重要です。

 

 

重力を除く練習

急性期状態や初回リハビリの立位や歩行などでの場面で、重力に対応するために多くの過剰代償を用いることが多いです

この状況でひたすら努力させることは、神経系の異常興奮や使用できる箇所の過使用に繋がり、円滑な動作の獲得が出来ません。

そして、過剰代償を学んでしまう悪循環な学習をすることになります。

 

その場合は免荷式トレッドミル歩行やホイストという器具を使用した歩行訓練に効果があると報告されています。

しかし、ただ免荷して歩行させるのではなく、その日の歩行状態に対応します。

また、セラピスト自らが重力環境に適したハンドリングを行うことも求められます。

 

 

おわりに

 

改めて小脳や運動失調について勉強すると、本当に難しいですね。

勉強するきっかけとなった新規入居者は下小脳脚の梗塞なので、そこまで失調の症状は無さそう。

 

実際に担当して、また記事を更新したいと思います。

 

参考資料

・病気がみえるvol. 7  脳・神経

・小脳・小脳脚梗塞における運動失調-運動失調の予後および小脳体性局在について-

・運動失調に対するアプローチ