・介護老人保健施設の分類を紹介します。
・分類は5つ。
・キーワードは在宅復帰。
こんにちは、底辺理学療法士です。
今回は介護老人保健施設(以下、老健)の5つの分類について紹介します。
分類によって家に帰れる可能性が高くなったり、利用料金が安くなることも。
具体的に説明しているので、老健に入職して間もない方、
家族が老健に入所する予定の方はぜひご覧ください。
家族の方は最初から『まとめ』を見るだけでもいいかと思います。
介護老人保健施設(入所)
老健には定義があります。
『介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活の世話を行うことを目的とする施設』
介護保険法第8条第28項
定義って長いしムズかしいですよね。
簡単にいうと要介護認定を受けて家で生活ができない人が、家での生活を目指す施設です。
老健では家に帰るためにリハビリを行います。
5つの分類
老健といっても、施設によって特色があります。
老健の目的は在宅復帰、つまり家に帰ること。
しかし、定義に在宅復帰を目指すとありますが、どれだけの人数を復帰させるか具体的な数字は書いてありません。
乱暴な言い方ですが定義からすると、老健は在宅復帰を目指していればいいんです。
実際に家に帰れなくても老健であることには変わりません。
でも、これって家族に対して親切じゃありません。
家に帰れるようにして欲しいのに、その能力がない老健も世の中にはあるのですから。
このことが関係するかしないかは置いといてい、
2018年4月より、在宅復帰率を中心に老健を5つに分類することになりました。
簡単にいうと、トップに分類された老健は在宅復帰に特化しています。
1番下の分類では、在宅復帰は厳しいかもしれません。
その分、料金が安いとのメリットもありますが。
老健は在宅復帰・在宅療養支援等指標と算定要件により、
超強化型、在宅強化型、加算型、基本型、その他型の5つに分類されます。
超強化型
最も在宅復帰に力を入れている老健を超強化型といいます。
超強化型の老健に分類されるには、
在宅復帰・在宅療養支援等指標(以下、指標)で90点中、70点以上の評価が必要となります。
さらに4つの算定要件を満たす必要があります。
・退所時指導
・リハビリテーションマネジメント
・地域貢献活動
・充実したリハ
超強化型になるにはかなり大変ですが、その分より多くの報酬を得ることができます。
令和1年11月の統計では全体の20.6%が超強化型の老健となっています。
在宅強化型
次に在宅復帰に力を入れている老健を在宅強化型といいます。
在宅強化型の老健となるには指標で90点中、60点以上の評価が必要です。
算定要件も超強化型と同じく4つすべて満たす必要があります。
・退所時指導
・リハビリテーションマネジメント
・地域貢献活動
・充実したリハ
令和1年11月の統計では全体の8.9%が在宅強化型の老健となっています。
在宅強化型でも条件が厳しいんですね。
在宅復帰・在宅療養支援機能加算算定施設(加算型)
ちょっと名前が長いので加算型といいます。
加算型は在宅強化型よりは在宅復帰率が低く、算定要件もやや緩くなっていますが在宅復帰がある程度できている老健です。
加算型は指標90点中、40点以上が必要。
・退所時指導
・リハビリテーションマネジメント
・地域貢献活動
算定要件は充実したリハが要件なしとなっています。
最初に充実したリハが外されるって変な話ですね。
在宅復帰にリハビリは関係ないのかも?
令和1年11月の統計では全体の34.5%が加算型の老健となっています。
基本型
こちらは超強化型と同様、新しく新設された分類です。
基本型は指標で90点満点中、20点以上が必要。
・退所時指導
・リハビリテーションマネジメント
算定要件はさらに緩くなり、地域貢献活動と充実したリハが必要ありません。
令和1年11月の統計では全体の32.0%が基本型の老健となっています。
その他型
指標で20点未満だったり、必要な算定要件を満たしていない老健はその他型となります。
以前の3つの分類では、その他型に当たる従来型は全体の老健の57.1%、半分以上が従来型の老健でした。
令和1年11月の統計では全体の4.0%がその他型の老健となっています。
在宅復帰・在宅療養支援等の指標の内容
在宅復帰・在宅療養支援等指標(指標)を1つずつ詳しく説明していきます。
計算方法や具体的な現場の例も一緒に紹介します。
在宅復帰率
在宅復帰率とは入所している方が、どれだけ在宅復帰できたかという数字です。
在宅復帰した人数÷6ヶ月間の退所者人数×100
50%超で20点。
30%超で10点。
30%以下は0点となります。
例えば6ヶ月間で10人退所したとします。
10人のうち、4人は健康状態が悪くなり入院することになりました。
しかし、ほかの6人は在宅に復帰できたので、在宅復帰率は60%。
20点獲得です。
対象は入所期間が1ヶ月以上の方です。
ここでポイントがあります。
在宅復帰と言いましても、必ずしも家ではある必要はありません。
在宅とは自宅に類する住まいである有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅を含みます。
これらを以下、社会福祉施設とします。
ベッド回転率
ベッド回転率はどれだけ在宅復帰をガンバっているかの指標にもなりますね。
30.4÷平均在所日数※×100
10%以上となると20点。
5%以上だと10点。
5%未満だと0点となります。
3ヶ月の入所者延日数÷3ヶ月間の(新規入所者数+新規退所者数)÷2
例えば入所者が30人いるとします。
3ヶ月の延日数は30人×90日(3ヶ月)で2700日。
その間に新規入所者が6人、新規退所者が2人でした。
平均在所日数は2700日÷4(6人+2人を2で割った数)
=675日
よってベッド回転率は30.4÷675日×100で4.5%です。
これでは0点ですね。
入所前後訪問指導割合
文字通り入所の前後で在宅予定先等に訪問して指導した割合です。
入所前後訪問指導をした人数÷入所した人数×100
30%以上で10点。
10%以上で5点。
10%未満で0点となります。
算定日が属する月の前3ヶ月間に、入所予定日前の30日以内、または入所後7日以内に訪問します。
対象の入所者は1ヶ月以上の入所期間が見込める人。
訪問先は退所後、生活をすると見込まれる居宅です。
自宅じゃなくても、社会福祉施設でも可。
訪問の結果を含め、退所を目的とした施設サービス計画の作成や診療方針を決定します。
具体的に当てはめてみます。
5月4日に入所する予定の方がいるとします。
なので、4月4日〜5月3日の30日間で居宅を訪問します。
しかし、この間に行けなくても大丈夫。
5月4日から1週間以内、5月11日までに訪問すればオッケイ。
訪問者はリハビリスタッフじゃなくでも、相談員や介護士でも問題ありません。
でも、訪問してお茶を飲んでくるだけじゃダメですよ。
居宅に応じたリハビリ計画だったり、施設サービス計画を作成します。
退所前後訪問指導割合
こちらも文字通り、退所前後に在宅先へ訪問して指導した割合です。
退所前後訪問指導をした人数÷退所した人数×100
30%以上で10点。
10%以上で5点。
10%未満で0点となります。
こちらの条件も入所前後訪問と似ています。
対象の入所者は1ヶ月以上の入所期間がある人。
退所予定日前の30日以内、または退所後30日以内に訪問します。
訪問先は退所後に生活する居宅であり、社会福祉施設でも可。
訪問では家族等に生活する上での指導を行います。
居宅サービスの実施数
居宅サービスとは在宅の方が受ける介護サービスです。
訪問介護、訪問リハビリ、通所リハビリ等があります。
居宅サービスの実施数が3サービス以上で5点。
2サービス以上で3点。
1サービス以上で2点。
居宅サービスを行っていないと0点です。
私が勤める老健は通所リハビリしかありません。
これだと1サービスで2点です。
しかし、併設されている別の施設で居宅サービスを2つ行っているので、合わせて3サービスとなり5点となります。
同じ敷地内にある施設の居宅サービスは合わせることができます。
リハ専門職の配置割合
老健でのリハビリスタッフ(PT、OT、ST等)の人員基準は入所者100人に対して1人以上ですが、
指標で点数を得るには、さらに人員が必要となります。
常勤換算法で算定したリハビリスタッフ÷入所者数×100
併設する施設のリハビリスタッフは数に入れることができません。
5以上で5点。
3以上で3点。
3未満は0点となります。
具体的に計算してみます。
常勤リハビリスタッフが6人いるとします。
入所者は90人。
6人÷90人×100=6.66…
5以上となるので5点獲得です。
支援相談員の配置割合
施設において常勤換算方法で換算した支援相談員の数を入所者の数で割った数に100かけます。
支援相談員の数÷入所者の数×100
3以上で5点。
2以上で3点。
2未満で0点です。
具体的に説明します。
3人の常勤相談員がいると思います。
入所者は90人。
3人÷90人×100=3.33…
3以上なので、これも5点獲得。
要介護4または5の割合
要介護4・5の入居者の割合が50%以上だと5点。
35%以上だと3点。
35%未満で0点となります。
喀痰吸引の実施割合
算定日が属する月の前3ヶ月間で喀痰吸引が実施された入所者が10%以上だと5点。
5%以上で3点。
5%未満で0点となります。
経管栄養の実施割合
算定日が属する月の前3ヶ月間で経管栄養が実施された入所者が10%以上だと5点。
5%以上で3点。
5%未満で0点となります。
算定要件
老健の5つの分類は必要に応じて算定要件も満たす必要があります。
・退所時指導
・リハビリテーションマネジメント
・地域貢献活動
・充実したリハビリ
しかし、この算定要件は必須ではないようです。
令和2年の厚生労働省の資料では、退所時指導やリハビリテーションマネジメントを実施していなくても、超強化型、在宅復帰型、加算型、基本型それぞれに分類されています。
指標の点数だけが必須なのか?
ナゾ!
退所時指導等
退所時指導等とは、入所者の退所時に本人や家族に対して療養上の指導を行っていることとされています。
また、退所後の状況確認の必要があります。
入所者の退所後30日以内に居宅を訪問するか、指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、
居宅での生活が1ヶ月以上継続する見込みがあることを確認し、記録していることとされています。
要介護4・5の場合は30日以内ではなく2週間以内の訪問となり、居宅での生活も2週間以上の見込みとなります。
リハビリテーションマネジメント
リハビリテーションマネジメントとは入所者の心身機能の維持回復を図るためのリハビリを計画的に行い、必要に応じて評価を行うことです。
評価を行い計画書を作成、計画書に沿ってリハビリを実施し、再評価をしなくてはなりません。
当たり前ですよね。
地域貢献活動
地域貢献活動は文字通り、地域に貢献する活動を行っていることとされています。
以前、老健で働いていた時は地域の介護を行っている方を集めて講習会をしていました。
また、年に1回の施設が主催するお祭りもこれに当たるのか?
地域貢献活動の内容や頻度は具体的な記載がないので、実施した記録があれば要件を満たすことになると思います。
充実したリハ
充実したリハとは少なくとも週3回以上はリハビリテーションを実施していることとされます。
リハビリ実施時間は20分程度でしょう。
しかし、個別で行うとの記載はないので集団でのリハビリでも可能です。
まとめ
今回は介護老人保健施設における、5つの分類を紹介しました。
・老健は超強化型、在宅強化型、加算型、基本型、その他型の5分類。
・在宅復帰を目指すなら超強化型、在宅復帰型。
・在宅復帰がムズかしいなら利用料金が安い加算型や基本型でも。
専門的なことも多く一般の方にはムズかしい内容ですが、老健への入所予定がある家族の方は、どんな老健があるか知っておくのも大切かと思います。
どの老健にも優秀なスタッフはいますが、分類が上になるほど優秀なスタッフが多くなる傾向です。
厚生労働省資料
包括ケアシステムを支える老健施設の機能
「在宅支援」を複合的な指標で評価